第15章 消失
「……ソレで一体何をするつもりなんだ?“父さん”に言うのか?何て言って説明するつもりだ?“エルヴィンに襲われてるの”って?そんなことをしたら家族はバラバラ、幸せな家庭は一気に崩れ去るぞ。ユリアのせいで、まだ何も知らない父さんとリヴァイの二人は一気に地獄に落とされるんだよ。そんなこと、“母さん”は出来ないよな?家族を愛しているんだから。苦しい思いをするのは俺達だけで充分だろう?なあ、そうだよな?」
スマートフォンが鳴る。ミケだ。
指は震えながら通話ボタンの上を泳いでいる。
早く、過ちを犯す前に、ミケ、ミケ……ミケ、
「ほら、鳴ってるぞ」
エルヴィンの言葉に体が止まる。スマートフォンの電源を切って、玄関の方に滑らせた。
「……いい判断だ」
まるで、“ほらね、やっぱり母さんは出来ないだろ”と言われたようだった。
エルヴィンは近付いて頬に手を添えて顔を上げさせた。
「……前戯も何も要らない。早く……早く済ませよう。それで満足するなら。……愛する息子の為と思えば易いよね」
一瞬、エルヴィンの眉尻が動いた。黙ったままで口付けされる。
一切声もない部屋には、二人の唾液が混ざる音や、エルヴィンが私に吸い付く音が響いた。
私は絶対に反応をしない。そう、それが今できる一番の抵抗。
案の定、エルヴィンは今までに無い程に機嫌が悪いし、何ならこの部屋の空気が二人の感情を物語っている。
私は与えられる刺激に唇を噛んだ。