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エルヴィン裏作品集

第15章 消失




ホテルに着き、チェックインしてからレストランに向かう。時間も丁度いい。日はとっくに落ちているが、海の近くだから薄らと水平線が遠くで滲んでいるのが見える。

キラキラと輝くレストラン。美しい料理はどれも最高で、お酒も進んだ。エルヴィンも楽しそうで、あっという間に時間は過ぎていった。

「美味しかった、大満足!テレビで見たまんまだったね!」

「うん、予想以上に良かった。何よりも母さんが嬉しそうだったし、やっぱり来て良かった」


すっかり大人びたエルヴィンは、グラスの縁を指で弄びながら目を見て話す。


「いやぁ、やっぱり母さんには勿体ないね」

「何が?レストラン?」

「ううん、それもだけど、エルヴィンが。良い息子だからね、こんなに母さん母さんで、彼女も居ないし。ねえ、好きな人はいないの?」

「話が飛ぶな……いないよ。前から言ってるだろ」

「嘘だぁ……こんなイケメンに産んだのに何がダメなんだろう、って、私かな?エルヴィンの後ろに私が見えて女の子が寄ってこないのかな?」

私がヘラヘラと話すと、エルヴィンがクッとワインを飲んだ。

「母さん、真剣な話がある。誰にも聞かれたくない。部屋に行こう」

「……え、うん、分かった」

私も最後にワインを飲んで、エルヴィンと共に部屋に向かう。

何だろうか。女っ気が無かった理由か?まさか……ゲイ?

それなら女っ気が無いのも頷ける。逆に安心だ、私のノット子離れやエルヴィンのマザコンが理由で恋人がいない訳じゃないのなら。

エルヴィンと私は部屋に着いて、オートロックの鍵を開けた。

海側にある窓は全面ガラスになっていて、明るい時間ならオーシャンビューが楽しめるだろう。


「凄い!!こんな部屋初めて……!ねえ、本当にお金は大丈……」
「母さん、ここに座って」

いつの間にかベッドに腰掛けたエルヴィンが自分の横を軽く叩いた。

海側を見ながら二人で並んで座る。今日は満月が美しい。

人は暗闇に近ければ近い程、素直に話してしまうらしいから、何かを打ち明けるなら今日は最適だろう。

私は今から息子に明かされるであろう秘密の様々な予想をしながら窓の外を見ていた。



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