第2章 あなたをください
近頃、壁内での変死が話題となっていた。
殺害された被害者は皆男性で、首には小さな切り傷が残される。
命に別状なく、何とか生き延びた男の証言によれば、相手は若い女。路地に行くその女が前を通り、甘い匂いを感じた瞬間に突然性衝動に駆られ、その女を追いかけて強姦した。事を終えたその後は我に返って女に土下座し、謝罪すると、女は許したという。
また謝罪して地に伏せた顔を上げると、女は首目掛けナイフを振りかざし、男を殺そうとした。
そして女はこう言った。
「“血をください”・・・か。確かに人の手に余る事例かもしれないな」
「エルヴィン、それを調査する為の調査兵団じゃねぇ、こういう事件を片付けるのは憲兵の仕事だ」
書類を読み、不満の声を上げるリヴァイに頷きはするが、エルヴィンは真剣に書類を読み込む。
「エルヴィン、憲兵団の団長になりたきゃあの薄ら髭を引きずり落として、新たに調査兵団の団長をこしらえてからなれ」
「リヴァイ、俺は憲兵団のトップになるつもりもないし、これを引き受けるとも言っていない」
「じゃあそのクソでも詰まったようなツラはなんだ」
「・・・少し用事がある。リヴァイ、すまないが今から出る」
「は、おい、待てエルヴィン!」
リヴァイの制止を聞かず、エルヴィンはある場所へと馬を走らせた。