第13章 【合同夢】冬の夫婦の一日
「エルヴィン、起きて、おーい」
リビングを温め、布団の塊と化した夫・エルヴィンを起こす。
私達夫婦は結婚して三年目。
周りの友人夫婦曰く、私達は“ 熟年夫婦”のようだと言われている。
その理由は彼の年齢が30代後半、自分の年齢が20代という差があるからなのか、私も彼に合わせて自然と大人ぶっている所があるのかもしれない。本当はもっと甘えたい、けど……嫌がるよね、絶対。
私の脳内では「やめろ、子どもじみた事は」と不快な顔をする彼の顔が浮かんだ。
もちろん、そんな人じゃあないが、なんだか嫌がられそうな気がした。だから甘えないことにしている。
結婚する前はそれなりに素直に甘えることも出来たけれど、夫婦になった今、私自身の評価がエルヴィンの評価に繋がる関係となったことも大きな理由だ。
エルヴィン自身に子どもっぽいと思われたくないのはもちろん、周りからも彼に相応しい妻であると認めて欲しい気持ちもあって、家の外だろうと中であろうと、結婚前のように気の抜けた甘い関係でいられなくなってしまったことは正直寂しい。
だけど仕方ないことなのだ。彼に相応しい妻でいるためには。
「ん…おはよう」
「おはよう。朝ごはん出来てるよ」
「ああ、すぐに行くよ」
布団からもぞりと顔を出したエルヴィン。起き上がることを確認する前に、私は先に寝室を出てリビングへ向かう。
作りたてのお味噌汁を二つのお椀によそい、グリルから焼きたての塩鮭を魚皿に。甘い卵焼きを乗せた小皿と炊きたてご飯のお茶碗を一緒に全部ダイニングテーブルに並べ終わった頃、二階からエルヴィンが降りてきた。
「いい匂いだな…今朝は和食か」
「うん、最近飲み会が続いてたでしょ?和食の方がいいかなって思ったの」
「ああ、助かるよ。ありがとう」
エルヴィンは優しく微笑んでダイニングチェアに座った。私もそれに続いて席に着く。
良かった、喜んでくれて。たくさん食べて欲しいな。