第1章 秘事は睫
立ち上がってベッドマットを直すエルヴィンの背を見る。
「団長・・・」
「なんだ?まさか続きをしたいのか?」
「ち・・・違います!!」
「はは、冗談だよ」
エルヴィンの言葉に思わず固まると、ふと微笑んだエルヴィンの指先が頬に触れた。
「こんな形だが、話に聞いて憧れていた君と自分の生まれた日に過ごせたのは素直に嬉しい。ありがとう」
「・・・こちらこそ、助けて頂き感謝致します」
「また日を改めて君と食事に行きたい、と言ったら迷惑かな。ずっと君と話をしたいと思っていたんだ。人づてに聞く功績ではなく、一人の人間として君を知りたい、そう考えていた」
「そこまで言われてしまっては断れませんよ・・・是非ご一緒させて下さい」
エルヴィンの言葉に微笑むと、エルヴィンがユリアの手の甲にキスをした。
「さて、怪しまれない内に抜け出そう。私も一緒にナイルの所へ行く」
「は・・・え、でも師団長はもうお休みに・・・」
「だから私も行くんだ。さあ、支度して」
破られてしまったユリアのシャツだが、ユリアがとりあえずと選んだ公爵のワイシャツ・・・をエルヴィンが着て、エルヴィンのワイシャツをユリアが着せられた。
「公爵の横幅が広くて助かったな、なんとか誤魔化せそうだ」
「い・・・いや、全く誤魔化せていません・・・」
パツパツの胸元に笑いを堪えながら、ユリアとエルヴィンは馬車で憲兵団本部のナイルの元へ向かい、書類を提出。
書類にあった他の違法競り会場も残らず摘発し、ユリアは間もなく上等兵一つ上、兵士長へ昇格。
公爵は娘の証言と書類の記したもの、書類にある指印の一致により投獄の後、秘密裏に処刑された。その死因は兵団関係者や民間の間では事故死とされ、真相を知るものはいない。
ユリアはその事件後エルヴィンと食事に行き、中央憲兵の中ではナイルを除く、唯一彼女だけが彼と親交を深めていたとか・・・。
-第1章 END-