第8章 痴漢、ダメ、絶対。
今日は午前中に終業式で午後からは学校も無い。エルヴィンがやってくるというだけで緊張する。一人家でエルヴィンを待つ。
高校で家庭訪問がある時は大体“生徒に何かしら問題がある、もしくは問題を起こした時”だからだ。
ソワソワと待つが、少し浮かれているのか帰宅後シャワーを浴び、見られる訳でもない下着も可愛い物にした。
服は……制服で。真面目な話なのに流石に可愛い服は違う気もして、ルーズにならないようにと制服に身を包んだ。
浮かれているのは下着だけ。正直心は色々余裕が無い。
リビングで待っていると、チャイムが鳴った。
「きた……」
大きく溜息を吐いてモニターで確認してから玄関に向かい、開けた。
「やあ、こんにちわ。制服から着替えなかったんだな」
「あ、いえ……真面目なお話だろう、と」
「相変わらず真面目だな」
肩をポンポンとされた。
ああ、家庭訪問という理由でなければ最高の日なのに。
いつも学校で見るエルヴィンとはまた雰囲気が違って見えるのは、自宅という場所のせいだろう。とりあえずリビングで待ってもらい、飲み物を出した。
「先生、ココア好きだなんて意外ですね」
しばらく会話せず、エルヴィンが選んだココアで漸く話題が出てきた。
「そういえば前は照り焼きチキンのサンドイッチ食べてたし……ドジしてたし。意外なとこばっかり見かけて……」
対面キッチンで、エルヴィンに背を向けて話をし、振り向いた。エルヴィンが対面キッチンのカウンターで頬杖をついて見ていた。
「カルデリアはよく俺の事を見てるな」
「そ……んなつもりじゃ」
「変な意味じゃない。優秀でよく気が付くし、優しいしな。俺の自慢の生徒だよ」
固まってしまい、顔に熱が集中するのが分かった。
「は、はは!やだ、めちゃくちゃ嬉しいです!あ、はい、ココア…… 」
エルヴィンにカップを手渡すと、優しい声色で礼を言われた。