第1章 思い出
「うるせーなチビ杉」
「んだと、この腐れ天パ」
「やめんか二人とも」
松下村塾の一室で、三人の幼い門下生の声が響く。
銀時と晋助がつかみ合いのケンカをしており、小太郎はそれを止めようと晋助の肩を押さえている。
「ヅラ、離せよ」
「ヅラではない。桂だ」
晋助は小太郎の手を振りほどき、銀時の髪を掴んだ。
「痛てーなチビ、何すんだよ」
「今日は許さねーぞ銀時」
顔をしかめる銀時を睨み、晋助は怒鳴った。
「今日は俺とお前で道場の掃除当番だろ。それをさぼりやがって。先生の授業中も寝てばっかじゃねぇか。少しはちゃんとしろよな」
「なんだよチビのくせに」
言い返した銀時を見つめ、小太郎が頷く。
「うむ。それは晋助の言うとおりだな。銀時、お前はさぼり過ぎだ」
「何だよヅラまで」
「だからヅラではない。桂だ」
小太郎が本日二回目のお決まりのセリフを口にした時、三人の頭でゴツッという鈍い音がした。