第7章 思い出の中の彼
「でも大丈夫 いつか僕が一緒に逃げてあげるだから今は...ね?」
そういいながら指切りの手を差し出す彼
「いつか迎えに来ます」
小さかった私の手がその言葉を信じ絡ませる
ふと引き裂かれる指切りの
見つかり折檻を受けるよりも彼と会えなくなるその恐怖の方が勝った
ふと今いた場所を見上げるとそこにはもう誰もいない
あぁ彼はきっと私が作った幻
それとも私にしか見えない妖怪だったのだろう
そう思いながらついには見えないお友達まで作ってしまい心の支えにする自分のことを嘲笑いながらも早く終わって欲しいと願いながら時が流れるのをただひたすら待った。
打たれ強いのではない
心を無にできるわけでもない
早く
早く
早く終われ
わたしにはただそれしかできなかった。
誰かから差し伸べられるはずの手は叩かれる手に変わり
優しい言葉をかけてくれるはずの両親の口からは心ない言葉が紡がれた
でもふと思うあの出来事がもし本当なら
「お願い早く迎えに来て」と
彼が言った「いつか」が今日ならばいいのにとただひたすら願う