第1章 逃走
それは彼が私を「お嬢様」と読んだから。
蔵に入れる手配をするのは必ず彼が行う。何も出来ず申し訳ございません。そうばあや言っていた。
真名を知るのはごく1部の者だけで外であった彼もそうだった。
月日が流れ大きくなった私は蔵から逃れる術はを覚え身を守る術を教える事を尽くした彼はお役御免となったのか顔を出すことはなくなった。
定期的に資料として封印、歴史、騙、呪、神と書かれた書物が送られてきた。座学のみになった今だが自分の周りの対応が変わり始めたことに気づいていた。
周りの人間の総入れ替えが始まり今まで手紙ひとつよこさなかった両親が手紙や贈り物を寄越すようになった。
そして周りだけが慌ただしい日々を過ごしていたある激しい雨が降る深夜にばあやが私を叩き起こしに来た。
「どうしたのばあや」
と寝ぼけた声で返すと
「お逃げください。 奇襲です。」
と言いながら薄衣1枚という寝間着の上に道中着を着せ
「これを」
と風呂敷を差し出し渾身の力で立たせる。