第4章 とりあえず信じてみることにした
戸惑う靴にも結局静司が手を貸してくれた
初めてのヒールに生まれたての子鹿のような姿になっている私を見るとふっと笑い
「この靴を選んでどうやら正解でしたね」
といい歩きやすいよう手を握ってきた
初めての暖かい感覚にぎゅっと握り返すと一瞬驚いた顔をした彼だったがそっと握り返してくれた
車に乗り私が育った家を見せるという約束を果たしてくれた静司
「なにか持ち帰りたいものはありますか? っと言ってもこの有様では残っているか怪しいですが」
そういう彼に頷き靴を脱ごうとすると急に横抱きにされる
「ひゃ!? ちょっちょっと」
と暴れると
「暴れないでください この状態では靴を履いて歩いても問題ないでしょう」
そういい私の自室に来た彼にどうしてわかったのかと聞くと一呼吸おき
「あなたの匂いがしたからですよ」
と変態発言をかました
そっと畳の上に下ろされ拙い足で机の引き出しを開ける
そこには小さな水晶が埋め込まれたペンダントが入っていた
そっと立ち上がると
「もう良いのですか?」
と聞かれこくりと頷く
「では まいりましょう」
そういい屋敷を後ろにしながら
「もう帰ることはないかもしれない」とそう思った