第1章 オセロ
約束ねぃ…すっぽかすもなにも、俺は最初からそんな事はしねぇ。
だって、分かんねぇだろう。いつどんな目にあうか。
人は、簡単に死ぬから。
「居る」から「ある」になるのに、さして時間がかからない事を、16の頃には既に知っていた。
だから…でも…。
アイマスクを着ける。世界は俺の前から消える。
昨日電話で話したの顔が浮かぶ。
「明後日は非番だから、一応空けておけ」
そう言ってしまったが、やっぱり俺は甘いのか。
だって、大切なものを遠ざけて、その方が幸せだろうなんてぬかす気にはなれねぇ。
姉上は寂しそうだったからだ。
結局、どっちが正解かなんて芋侍には分からねぇや。
正しいとか間違いとか、そんなのはあまりにも不確かで、例えば、今は知らねぇけど、白夜叉と呼ばれていた頃の旦那とか、桂や、高杉みてぇな悪党にも信念とか、惚れた女もきっと居て、それを守る為に刀を振るんだろう。大事なものを傷つけようとするヤツがいたら、戦うだろう。
男なんだから。侍なんだから。
俺が近藤さんを慕う気持ちと、鬼兵隊の奴らが高杉を慕うのと、根っ子は同じだろう。
違うのは、そん時のお偉いさんから見て、都合が良いか悪いか。それだけだ。
いつか、オセロみてぇに簡単にひっくり返る。
…もしそうなったら、はどうするんだろうか。