• テキストサイズ

小鹿の隠れ家

第1章 恋愛に至る道(出会いから恋に辿り着くまで)


10

審神者としてのお披露目話が出て二日目、漸く佳乃子はこんのすけと光忠の説得に応じた。
条件としてバロンは必ず連れて行くということと、光忠とこんのすけが傍に控えているというのが絶対条件として約束されてのことだった。
光忠はその二日の間、こんのすけ以上に説得と懐柔に尽力していたせいか七日目でもまだ少し怯えていたはずの佳乃子がすっかりと懐き、まるで親鳥を追う雛鳥がごとく後を付いて回られるようになっていた。

「主?」
「はい……」

現在は昼餉前、そろそろ準備をと立ち上がった光忠に佳乃子も一緒に立ちあがって後について歩いている。
はぐれないようにか心細いからか佳乃子の片手にはバロン、反対の手には光忠の服の裾が握られていて光忠が歩くとひたひたと足音がついてくる。止まるとピタリと止まって、じぃっと光忠が動くのを待っている。
光忠は服の裾が引っ張られる感覚に慣れず立ち止まると振り返って見下ろした。すると佳乃子はまるで叱られた子犬の様な目で見上げてくるので思わず眉が下がる。

「怒ってないよ」

困ったような表情で笑い、光忠は一度裾を持つてをやんわりと放させるとそのまま手を取った。
見上げる佳乃子が驚いたような表情になったので光忠が微笑んでやると、佳乃子の表情がゆるゆると綻んで小さな笑みを浮かべた。
頬を淡く染め、ふんわりと華が綻ぶような淡い笑みに今度は知らず光忠の方が目を見開いた。同時にきゅっと握り返された手に心のどこか柔らかい部分を握られた気になってしまうが佳乃子は気付かない。
ただ、突然空いている方の手で口元を隠して横を向いた光忠に、きょとんとした表情になって首を傾げるだけだ。

「みつたださま?」

戸惑っているのか、佳乃子の口からは舌足らずな発音で光忠の名が零れ落ちる。それで我に返った光忠は、一度、二度と深呼吸すると何でもないと微笑んで漸く佳乃子の手を引いて歩き出した。
厨に着く頃には先ほどのやり取りは些細なこととして流れていき、光忠と佳乃子は二人して食事の準備に取り掛かる。
/ 34ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp