第1章 恋愛に至る道(出会いから恋に辿り着くまで)
「ぴっ?! あ……ご、ごめんなさい……」
佳乃子が飛び掛かってきて驚いたこんのすけが悲鳴を上げかけ、その横にいた光忠が佳乃子を掬い上げるように抱き上げてこんのすけを庇うと急に持ち上がった佳乃子が悲鳴を上げて正気に戻る。
ちょっとしたお笑いのネタの様な状態を繰り広げ、直ぐに反省した佳乃子が光忠の腕の中でしょんぼりとこんのすけに謝罪をしてはたと我に返る。
少し上を見上げれば光忠の顔が割とすぐ近くにあり、それに声のない悲鳴を上げるとバタバタと降りようと暴れるが小柄な佳乃子が光忠の叶うわけはなかった。
はいはい、と宥められながらそっと廊下に降ろされると先ほどとは逆にバロンを拾って短刀と同等じゃないかと思えるほどの勢いで厨から逆の自室に向かって佳乃子は走り去っていった。
「……僕、悪いことしちゃったかな」
「いえ、わたくしめは助かりましてございます」
「もしかしなくても、鳴狐君のお付きの狐君にも同じことしてるのかな」
止める間もなく走り去った佳乃子の背を見送って、互いに目を合わせた光忠とこんのすけは苦笑を浮かべると肩を竦めあう。
その後一人と一匹はどうするか話し合って光忠は先に厨に入り、こんのすけは改めて佳乃子に声を掛けるために走り去った方へと駆けていく。
佳乃子が自室にと定めた部屋の前に行くと中から気配が感じられて閉められた障子を器用に開けて中を覗くと、布団の上に丸まった団子が一つ。
言わずもがな、掛け布団に包まって丸くなっている佳乃子だろう。
「佳乃子様、入りますよ」
「……こんのすけ様?」
「はい、飛び掛からないでくださいね。光忠様もいませんからまた叫んでしまいますし」
「う……ごめんなさい」
こんのすけが声を掛けるともぞもぞと動いた布団から佳乃子が顔を出し、こんのすけの姿を認めると起き上がって首を傾げる。
先ほど襲いかかってしまったことを反省しているのか、こんのすけが追いかけて来るとは思っていなかったのか、はてまた両方か。