• テキストサイズ

小鹿の隠れ家

第1章 恋愛に至る道(出会いから恋に辿り着くまで)


09

厨に入った佳乃子は光忠が居ないのでそわそわとしながらバロンを抱きしめていた。
光忠と離れると途端に母親が恋しくなるのである、光忠は雰囲気が母親に似ていて近くに居るとそれだけで母親が恋しい気持ちが僅か落ち着く。
とはいえ、佳乃子としては自分にかかりきりになるというのも何かが違うと思っているので、出来れば自由にしていて欲しいと思っている。しかし、この七日間は近侍という役割があるからと何かと傍に居てくれていたので、昼間、この誰かに会うかもしれない時間に一人というのは非常に落ち着かない。
きょろきょろと周囲を見渡して気配がないことをもう一度確認するとバロンを抱きしめたまま下準備を始める。
お昼は少し豪華な物が良いのだろうか、何を作るか結局決まらなかったことを思い出して食材を眺めしばし考え込む。
光忠が来なければかまどが上手く使えない佳乃子には料理を始めるまでに少し時間がかかる。かといって、勝手に下準備をして光忠が作ろうと思っていた物と違うと困るなと気づき途方に暮れていると、厨に向かってくる誰かの気配がした。
一瞬戸惑って逃げるためにも開け放したままの入口を見るとぴょこりと揺れた尻尾が影から見えた。

「お付きの狐さん?」

揺れた尻尾だけではさすがの佳乃子も判別が出来ない。こんのすけは毎日傍に居るわけではなく、政府との橋渡しの為にあちらこちらを巡っているはずである。
様子を見に来ると言っていた気はしているがまだ七日では来ないかもしれないと首を傾げる。
少し待つと、見えた狐の尻尾以外に聞こえてきた声に気づいて目を瞬かせる。聞こえてきた声が光忠ものだからだ。
お付きの狐であれば、共に居るのは鳴狐のはずである。以前、一匹で歩いている所に遭遇した佳乃子はしばらく話をして鳴狐という刀剣男子と共に居るか一人で本丸内を歩いていると聞いていたからである。
とすれば、光忠が共に居るのはこんのすけの方だろうか。バロンと一緒にきょとりと首を傾げながら逃げるのを忘れて入口を見つめていると、見えた姿は光忠とこんのすけで佳乃子は思わずこんのすけに駆け寄って抱き着こうとした。

「ふぎゃっ?!」
「おっと、主落ち着いて」
/ 34ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp