第1章 恋愛に至る道(出会いから恋に辿り着くまで)
そのモノとは、鳴狐のお付きである狐だ。光忠は佳乃子が管狐であるこんのすけに抱き着いてもっふもっふとその毛並みを堪能していたのを知っている。
あの時、あの場所の近くには光忠以外居なかったし、いくらこんのすけの渾身の叫びであっても部屋二つ以上をまたぐことがなかったが故に佳乃子の存在が露見しなかっただけである。
もし、お付きの狐が一匹で本丸の中を歩いていることがあれば、あるいは……。そう予想出来て光忠の顔は若干引き攣っていたが、佳乃子の存在を知っていたとしても口にしようとしないお付きの狐は既に佳乃子に懐柔されているのかもしれない。
誰にも悟られない様に小さなため息を吐いた光忠に、ひとまず落ち着いたらしい長谷部が再び視線を戻して口を開いた。
「まだ、こんのすけには確認していないが……前の主が居なくなって久しいこの家屋に座敷童子でも来たんじゃないかという意見があってな」
「ぶっ……」
「ん?」
「あ、いや、なんでもないよ」
座敷童子、という言葉に思わず吹出した光忠を長谷部が訝しげな表情で見る。慌てて首を振れば、突飛もない考えなのは解っていると言いながら話を続ける。
統合すると、付喪神である刀剣男子が居るなら座敷童子も居る可能性はあるがもしかしたら賊かもしれないのでその正体を確かめたい、ということらしい。
光忠はその話を聞いていよいよこんのすけと相談して佳乃子をどうにか刀剣男子の前に担ぎ出さなければならないな、と担ぎ出したその瞬間を思い遠い目をする。
自分一人見ただけで卒倒したのだ、これだけの刀剣男子を目の前にするのは無理があるが一人ずつも難しいだろう。
最悪は全員にその姿を視認させたら後は早々に逃がすか……下手をしたらどこかに閉じこもって出て来なくなりそうだな、と先を予想して引き攣った笑みがこぼれる。
長谷部はそんな光忠を気にすることなく調査と捉える手順の計画を立てていく。主命の長谷部が、その座敷童子と予想している女性が子供じゃなく大人で、対人恐怖症気味で小動物の様な新しい審神者であると知ったらどうなるのだろうか……。
光忠は想像して少し怖いと思いながら、ひとまず話に頷きながらもう少し様子を見るようにと説得して、至急こんのすけを呼んで相談しようと決めたのだった。