第1章 恋愛に至る道(出会いから恋に辿り着くまで)
「実は、だな……前の主が居なくなって久しいこの本丸が、少し変だという話が出ている」
「変?」
「ああ……我らに休暇命令が出たのは、まぁ、こんのすけが何らかの指示を受けたという光忠の説明で納得できたんだが、それならこの休暇中この本丸を管理する誰かが必要だ」
「まぁ、そうだね」
「だが……誰もそれらしい人間、または精霊やこんのすけの様な式神を見ていない」
思いの外深刻な表情で告げてくる長谷部に、光忠は次の主がもう着任して一人で全員分の仕事をしているよ、とはさすがに言えなかった。
黙り込んで話の続きを促すと、長谷部はチラリと短刀の五虎退を見やる。
五虎退は手元に居た虎の子をぎゅっと抱きしめながら、少しだけおどおどとした様子で口を開く。
「そ、その……最近虎さんたちがとってもご機嫌で、この間はなんだか新しいリボンまでしてて」
五虎退の抱きしめている虎の子は、確かにご機嫌な様子でゆるゆると尻尾を揺らしてゴロゴロと喉を鳴らしている。それが五虎退に抱きしめられているからなのか、何か良いことがあったからなのか光忠には判別できないが五虎退が言うには良いことがあったかららしい。
そしてリボンについては確かに佳乃子が来る以前に見たものとは見違えるように新しく綺麗になっている。
そんな五虎退の後を引き継ぐように薬研が口を開く。
「俺っちは、暇だったから庭先でも散歩しようとして綺麗な着物の影を見たぜ」
「あ、ボクも見たよ! 追いかけてみたけど姿はなかったんだよね」
薬研が告げた言葉に、パッと反応したのは乱藤四郎でそれぞれが女の子の着物だったと断言したことで同じような物を見たことのある者が次々と声を上げる。
その中で不自然に固まったモノも居たのだが、自分たちの議論に熱中している刀剣男子たちは気付かない。
光忠はそっとその固まったモノに視線をやると何やら我慢している様な風情でゆるりと尻尾を振っていた。