第1章 恋愛に至る道(出会いから恋に辿り着くまで)
「まぁ、ちょっとずつ慣れて」
「……はい」
「僕は呼ばれちゃったからちょっと行ってくるよ。君はどうする?」
「厨でご飯の準備をします。まだかまどは上手く使えないので、下ごしらえだけ」
「じゃあ、早めに用事済ませて厨に行くよ」
光忠は今日も刀剣男子たちと佳乃子を引き会わせることを諦めて、それでも一言告げるのは忘れずに伝えてから話題を変える。
佳乃子も今のままではいけないという意識はあるのか、しょんぼりと肩を落としながら頷くその姿がまた子猫や子犬が叱られた後の様に見えて光忠は頭をそっと撫でてやる。
この後の予定を確認すれば光忠が撫でたことで少しだけ安心したのか顔を上げて返事が返ってきた。
光忠はそれに了承して、厨に行くことについて佳乃子がしっかりと頷いたのを確認してから囲炉裏部屋がある方の廊下を曲がって行った。
佳乃子の方は少し心細げに光忠の背を見送ると、厨がある方へと足早に進む。
光忠が居る時は普通の速度だが、一人の時はとにかく人の気配が感じられるのが怖いので自然と足が速くなるのだ。
時折、自分に気付いたらしい刀剣男子が追いかけてくる気配があるが、まるで忍者か何かの様にスルリと逃げ切ってしまう佳乃子である。
そんな佳乃子ではあるが、実は刀剣のお付きの狐だったり囲っている虎だったりとは仲良しであるし、なんだかもふもふふわふわを首や肩に巻きつけている刀剣を見かければ影ながら触ってみたいと眺めていることがあったりする。
光忠が居ない時に限ってそういう行動を取るので、実は光忠も知らない佳乃子の行動範囲である。
「かあさまにあいたい……」
廊下の角をもう一つ曲がる時、ふと足を止めて光忠が消えた方を振り返りながらぽつりと落とした佳乃子の言葉は誰にも聞き咎められることはなかった。