第1章 恋愛に至る道(出会いから恋に辿り着くまで)
07
佳乃子が光忠に周知を依頼した書面は、速やかに本丸に居る刀剣男子たちすべてに行き渡った。
光忠としては新しい審神者からの指示であると伝えたい想いもあったが、こんのすけから紹介されたわけでもなければ審神者として顔を出したこともないのでは誰だ、会わせろと逆に騒ぎになりかねない。
書面を告知しに行く途中でそこに思い至った光忠はその騒ぎで佳乃子が逃げ惑い引きこもるのを想像してしまい、結局こんのすけから新しい審神者が決まるまでの指示だからということで全員を説得した。
刀剣男子たちも新しい審神者が決まるまではこんのすけが何かしら前任審神者の上司から指示があるかもしれないというのは納得できたらしく、そう揉めることもなかったのは幸いだったと言える。
そうして始まった刀剣男子たちの休暇は七日目を数え、書面ではそれが最終日であると記載されていた。
光忠は佳乃子との約束通り傍についてはいたが料理以外は声を掛けられない限り手を出すことはなく、佳乃子も約束を守りつつも傍で見守っている光忠に徐々に慣れ始めていた。
「主、そろそろ昼食の時間だけど今日はどうするの?」
「え……と、光忠様は何か食べたい物は?」
畑仕事を終えて部屋へ戻る道すがら尋ねられ、佳乃子は一瞬ビクリと肩を竦めたが少し考えるそぶりをした後思いつかなかったのか光忠を見上げる。
身長差は二十センチ以上、上を向くように見上げなければ顔が見えない佳乃子には少々大変な姿勢ではあるが本丸に来る前もさほど変わらないので慣れた調子で歩みを進めている。
片手にはバロン、反対の手には収穫した野菜の入った篭があり光忠が内心で代わりに持ちたいとそわそわしていることには気付いていない。
問いかけた光忠の方は逆に問い返されてうーんと唸る。昨夜と今朝のご飯はなんだったかと思い出し、昼餉に向いた料理を考えながら二人揃って厨へ向かっていると急に佳乃子が足を止めて近くの部屋に入り込んでいく。
それに驚いて足を止めた光忠は気配を探るが特に誰も居る様子はないと思い、声を掛けようとしたところで少し遠方から誰かの大きな声が聞こえてきた。