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小鹿の隠れ家

第1章 恋愛に至る道(出会いから恋に辿り着くまで)


要所だけ抑え、必要な分をきっちりやれば一週間でさほど荒れることはないと思った佳乃子だったが、光忠の低くなる気配にビクビクとしながらも視線をそろり、そろりと見上げるとジロリと睨まれる。
ただでさえ整った容姿に威圧感のある長身で、普段は穏やかなはずが鋭い気配を纏った光忠は佳乃子の恐怖心を大いに煽ってきて固まったのは一瞬。
我に返った佳乃子は一も二もなく抱きかかえていたバロンの背後に隠れるとジリジリと後退を始めた。
手渡すはずだった書面が差し出されたままではあったが、今は逃げなさいと本能の警笛に従って踵を返そうとするとその直前に光忠に捕まってしまった。
腕を掴まれた瞬間に、身体ごと飛び跳ねた佳乃子はバロンすら手放して逃げようと暴れ出す。

「ちょっ、主! 主、落ち着いて!」
「やっ! やだぁっ! 母様っ! かあさまっ!」
「あるっ……佳乃子ちゃんっ! ごめん! 僕が悪かったからっ」

武術の心得でもあるのか、なかなか的確に腕から逃れようと身体を動かす佳乃子に一瞬前の光忠自身にも理解できない怒りなど吹っ飛んで慌てて抱き寄せようとする。
パニックになった佳乃子は火事場の馬鹿力なのだろう、渾身の力で逃げを打ち光忠は逃したら最後だとそれを追いすがって何とか腕の中に引きこむと佳乃子の名を呼んだ。
審神者就任が確定してからすぐ、光忠は佳乃子を主と呼ぶようになりほんの少し寂しそうな目をされながらも丸一日それを通していたのだが、今はそれでは届かない気がした光忠である。
必死に謝って、背を撫でて、叩かれようと蹴られようと離さず自分の心音を聞かせるように頭を抱え込んでいると徐々に落ち着いてきた佳乃子がひっく、ひっくとしゃっくりをしながらも涙を止めた。
怖がって俯いたまま、フルフルと震えてはいるが散々暴れて疲れたのか抵抗がなくなった身体は光忠の腕の中で今にも崩れそうになっている。
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