第1章 恋愛に至る道(出会いから恋に辿り着くまで)
佳乃子にとっては男性と四六時中一緒にいる事が恐怖なのである。しかし、近侍は必ずつけなければならないというルールを前にそれを回避する術を思い付かず、視線を彷徨わせる。ジリジリと後退してしまうのは長年の習い性に他ならない。
佳乃子がこんのすけに救いを求めるように視線を向けると、こんのすけまでがふっくらと笑いながら光忠の近侍を勧めてきた。
「この本丸で佳乃子様と面識があるのは光忠様だけですし、お母様に似ていらっしゃる光忠様なら慣れることは可能ではないですか?」
「こんのすけ君……それはちょっと、僕一応男だからね?」
「……きっ、近侍をつけないというのはっ」
「出来ません。審神者になるということは、何かしら思惑が絡みついてくるということです。本丸が絶対に安全という保証もありませんから」
「うっ……な、なら、お、おことわっ」
「こちらで先ほど正式な登録をしましたから、それも難しいですね」
なんとか回避しようとする佳乃子に、なかなかに容赦なく正論を返すこんのすけは抜け目なく退路を断っていく。
佳乃子の方も必死に考えているが、一度引き受けたことを結果を出さずに帰るということは出来ないことは今までの経験で解っていた。
普段は優しい母親も、与えられた職務には厳しい人である。対人の関係に関して気配りをしてくれても、仕事を投げ出すことに関しては許されたことがない。
最終的に、がっくりと肩を落とした佳乃子はフルフルと震えながら再び光忠を見上げた。
「うーん、そんなに嫌かな? 僕が怖いかい?」
困ったように問われて、佳乃子は申し訳ない気分で俯き考える。男性は怖い。特に自分よりも大きな男性はいっそ相撲取り程に恰幅も良ければ印象が違うが、光忠の背丈は父親を思い出させる。