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小鹿の隠れ家

第1章 恋愛に至る道(出会いから恋に辿り着くまで)


外での会話が聞こえたのか、執務室のふすまがほんの僅かだけ開いて黒い三角の耳が顔を出したことでこんのすけと光忠が会話を止めると佳乃子がピルピルという音が当てはまりそうな震え方をしながらもこんのすけと光忠を見つめていた。もちろん、バロンの影からこっそりといった風ではあったがかなりの進歩にも思えて一人と一匹は顔を見合わせると苦笑しながら中へ入る。
ふすまを開ける頃にはモニターの下の操作部のところまで戻っていた佳乃子は、光忠が近づいてくると震えながらも逃げることはせずまんじりとした風にその姿を見つめている。
光忠はそんな佳乃子を警戒心の強い野良の子猫の様だと思ったが言葉には出さない。むしろ、振えている姿は仔馬や小鹿のようではないかと思ってしまいゆるく頭を振ってその思考を追い出した。

「端末の操作方法はこのマニュアルを読んで頂いた方が早いと思いますが……佳乃子様に一つ。審神者は常に近侍をつけなければなりません」
「きんじ、ですか?」
「はい。近侍とは、審神者の執事とか側近のようなものです。通常は第一部隊の隊長に兼任して頂くものですが……」

光忠を気にしながらもこんのすけの説明を聞いていた佳乃子は、近侍の説明を聞くにつれて震えが大きくなりフルフルと頭を左右に振って必要ないと主張し始める。
こんのすけはそんな佳乃子を見て困ったように首を傾げるとゆらりと尻尾を揺らす。
嫌だと言われてもこればかりは決まりのようなものである。
特に、この本丸は社畜のような思考を持ってしまった刀剣たちばかりであるから、第一部隊の隊長になった者は確実に審神者の近くに侍るだろう。
しばし考える素振りを見せるこんのすけと、どんどん顔色を無くしていく佳乃子にそれまで形だけでもと口実だけでなく掃除をしていた光忠が口を開く。

「こんのすけ君、近侍は必ず第一部隊の隊長じゃないといけないのかい?」
「え? いえ、大丈夫だと思いますが……」
「そう。それなら佳乃子ちゃんに提案なんだけど、当面は僕を近侍にしとかないかい?」

光忠の問いに不思議そうにしながらも答えたこんのすけが、佳乃子に持ち掛けられた提案を聞いて納得したように頷く。
提案された本人の佳乃子の方は、ビクッ! と大きく身体ごと跳ね上がり涙目で光忠を見上げた。
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