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小鹿の隠れ家

第1章 恋愛に至る道(出会いから恋に辿り着くまで)


佳乃子を見ていたが、さすがに出会いがしらと起きた直後の怯えっぷり、更には今も視線が合っただけでビクリと肩を揺らしてバロンの影に隠れようとする様子に声を掛けるのは憚られたらしい。
どこか言いづらそうにしながら、光忠が問いかけたのはこんのすけにだった。
こんのすけの方は、問われた理由が判らずきょとんとした雰囲気で首を傾げて光忠を見ている。
光忠は、こんのすけのその反応がもどかしく佳乃子から視線を外してこんのすけを見ると疑問を口にして最後の部分ではちらりと佳乃子を見やった。
佳乃子の方はと言えば、そんな風に言われるのは慣れたものなのか特に口を挟まず見守っている。
こんのすけは光忠を見上げ、それから佳乃子を見た。そうして困ったように尻尾を揺らすと再び光忠を見て言葉を濁すと再び佳乃子を見て、じぃっと見つめて無言で何かを訴えた。
佳乃子は、そんなこんのすけの視線に気づき視線を泳がせるとぎゅぅっとバロンを抱きしめて顔を隠してしまった。
ここにきて、振り出しに戻ったかのように三人が無言で時間を過ごすことになり、最初に居心地が悪そうにもぞりと動いたのは光忠だった。
こんのすけと佳乃子の様子に、何やら自分が勘違いしているのではないかということに思い至ったらしい。

「……そ、の……」
「え?」

光忠が何と言えば良いのかと視線を泳がせ始めた頃、小さな、小さな、ともすれば聞き逃しそうなほどに小さな声が佳乃子から漏れ聞こえ、光忠は反射で聞き返した。
その声が存外大きくなってしまったので佳乃子がビクリと身体ごと飛び跳ねて光忠を驚かせたが、それでもバロンの影から少しだけ顔を覗かせて視線を向けられたので更に驚いて固まってしまう。
つい小一時間ほど前には視線すら向けられることなくひたすら怯えられていたのだから、その驚きも当然と言えば当然なのだが佳乃子はへにょっと眉を下げた情けない顔をして再び視線を泳がせるとようやっと口を開いた。

「わ、たし……次の誕生日で、その……二十歳に……」
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