第15章 馬と鹿とそれから獅子と
そう言って床に突っ伏した九十九を、パワードスーツを着た誰かが抱き起こした。
「いかんぞ八木君!先生がグラウンドで待っているんだ!皆も早く行こう!」
「その声は、飯田?お前……すげぇかっこいいなそのコスチューム……」
「ありがとう!兄のものを参考にしてみたんだ!さあ、君も着替えて」
「これ着るんかぁ……フハッ、イヒヒ……めっちゃおもろ……最高だわ」
「ああ、子どもたちに人気が出そうな造形で素敵だと思うぞ!」
「フォローが優しいよぉ。飯田、お前いいやつだな」
飯田はおれを引っ張り上げて服の埃を払ってくれた。世話焼きさんかよ。そうして彼はてきぱきと他のクラスメイトたちを先導して更衣室から出て行ってしまった。なんというか、委員長タイプだな、飯田。確かに飯田の言う通り、子どもたちに好かれそうなデザインは大事だ。うん。それにこれ以上オールマイトを待たせるわけにはいかない。急いでキグルミ、もといコスチュームを身に付ける。
首の周りにあしらわれたたてがみはふわふわとしていてとても手触りがいい。尾白のといい勝負だ。その場で飛び跳ねてコスチュームの着心地を確かめてみると、重そうな見た目に反してとても軽かった。これなら問題なく動き回れそうだ。
首の周りにあしらわれたたてがみはふわふわとしていてとても手触りがいい。尾白のといい勝負だ。その場で飛び跳ねてコスチュームの着心地を確かめてみると、重そうな見た目に反してとても軽かった。これなら問題なく動き回れそうだ。
飛び上がって着地しても物音がしないのを不思議に思って足の裏を見てみると、艶々としたピンク色の肉球がついていた。これが衝撃を吸収してくれているのかな。「足音が極力しないような装置」ってのは確かに要望に書いてあった通りだけど、まさかこういう形で実現するとは......そうか、肉球か......しんみりとしながら首を振って視界を確かめる。こちらも良好。キグルミ特有の視野の狭さはない。目の前のクリアな視界に首を捻る。一体どういう仕組みになっているんだろう。