第15章 馬と鹿とそれから獅子と
「なんだよみんな超カッコいいな!!!」
赤青黄色、無機質なロッカールームをカラフルなコスチュームが埋め尽くしている。空いているロッカーを探しながら、九十九は生まれて初めてテーマパークを訪れた子どものようにソワソワと周囲を見回した。
轟の半分氷ってそういうことか!本当に左半身が氷のようなコスチュームに覆われている。どんなギミックがあるんだろう。楽しみだ。
あ、あの全身黒っぽいコスチュームすげぇいい。首から下をすっぽり包んだ黒いマントがかっこいい。闇夜に紛れて悪を挫くヒーロー!って感じだ。同じ黒でもジャージっぽい人もいるな。耳に何かの機械をつけているから発動系かな。それとも操作系?
お、プロレスみたいなコスチュームのやつもいる。パワー系かな。いいなぁパワー系!それにあのマスクしてる腕が何本もあるやつ、初日から気になってたけど索敵に向いてそうな個性だよな。先端に口らしきものがくっついているものもあるし、目玉がくっついているものもある。360度あれで監視できるとなればかなり強いだろ。
あー!パワードスーツのやつもいる!かっこいい!メカメカしてていいなぁ!それに明らかに毛色が違うのもいるな。なんだあのキラキラした王子様みたいなやつ。確か個性把握テストで腹からレーザー出してたよな。目立つなぁ。
「うぶっ!?」
いきなり頬を何かに叩かれて飛び上がった。目の前には誰かの髪の毛が、いや、これは尾白の尻尾か?ゆらゆらと揺れて通路を塞いでいる尻尾を避けながら奥のロッカーを目指す。手で退かしながらさり気無く尻尾の先端のふさふさした部分に触れると、尾白が振り返った。
「あ、ごめん。通れるか?」
「うん、大丈夫。尾白のは柔道着みたいだな。武闘派って感じでかっこいい!……お?靴が孫悟空っぽいな。中華風か?アクセントになってていいね。首のふさふさした気持ちよさそうなやつ触っていい?」
「どうぞ」
「やったー!」
尻尾とはまた違った質感のモフモフに思わず真顔になる。
「癖になりそう」
「顔が怖いんだけど」
困り顔の尾白が、尻尾でぺしりとおれの額を叩いた。