第14章 初回から我らのヒーローが来た
「は、初めて轟に褒められた……」
「いや」
褒めたわけではないという言葉は、オールマイトの声に遮られて九十九の耳には届かなかった。混雑しないよう出席番号順に取りに来るよう指示されて、九十九はこの時ばかりは順番が最後であることを嘆いた。
ちくしょー早く見たいよコスチューム!おれの下手な絵と説明で、ちゃんと伝わったのかな。本当はオールマイトみたいなジャンプスーツがよかったんだけど、おれとオールマイトじゃ個性が全く違うわけで、パワー系と発動系では必要な装備も変わってくる。パワー系はそのままでパワードスーツを着ているようなものだけど、おれは違う。そのままだと弱い。敵への攻撃と捕獲は個性で何とかするにしても、本体であるおれがやられたらもうどうしようもない。だから、必要なのは先ず敵に捕まらないための機動力、そしてもし捕まって攻撃されても他のヒーローが来るまで持ち堪えられるだけの防御力。俊典さんからアドバイスを貰って、その2つに重点を置いて考えてみたんだけど。
要望を書いた用紙を思い出して暴れる心臓を宥めながら、九十九は口元に笑みを浮かべた。一番最初に紙に書いた一言を、頭の中で反芻する。
「21番、八木少年!」
「ッハイ!!!!」
名前を呼ばれて我に返ると、ちょうど八百万が教室を出て行くところだった。みんなもう更衣室に向かってしまったのか、オールマイトとおれ以外には誰もいない。
「どんな仕上がりになったのか楽しみだね。さ、早く準備してグラウンドβに集合!」
「イエッサー!」
オールマイトに敬礼をして、くるりと方向転換して歩き出す。が、何やら物凄い違和感を感じて下を見ると、何故か左手と左足、右手と右足がセットで交互に動いていた。あれ?ナンバ歩き?
「ブフッ!……ゴホン!九十九君、もしかして緊張してる?」
「してないです!全然余裕っす!武者震い、いや武者ナンバ歩きなんでコレ!」
「武者ナンバ歩き!」
思い切り噴き出したオールマイトに親指を立てて、再び早足に歩き出す。とは言いつつもいつもどうやって体を動かしていたのか思い出すのに必死だ。ギクシャクした動きで更衣室に向かうと、もう大半がコスチュームに着替えてわいわいと盛り上がっていた。