第14章 初回から我らのヒーローが来た
始業を告げるチャイムが鳴り始めるのと同時に聞こえてきた小さな地響きに、クラスのざわめきがピタリと止んだ。初めてのヒーロー基礎学が遂に始まるんだ。一体どのプロヒーローが担当するんだろう。期待に胸を膨らませる面々の視線を一心に受けた教室の扉が、凄い勢いで開け放たれた。
「わーたーしーがー!!普通にドアから来た!!!」
颯爽と現れた筋骨隆々のその男に、クラス中から悲鳴や感嘆の声が漏れる。それもその筈、長きに渡ってヒーロー界のトップに君臨し続け、存在するだけで犯罪の抑止力になると言われる平和の象徴が突然目の前に現れたのだ。皆が憧れるスーパーヒーローは、銀時代のコスチュームのマントをたなびかせ、鼻歌を歌いながら意気揚々と教室へ入ってきた。あんぐりと口を開けた九十九の手から、目の前のヒーローと同じ銀時代のコスチューム仕様のシャーペンが転がり落ちる。
「オッ…?!オオオッオ!!!!???」
「オールマイトだ…!!すげえや本当に先生やってるんだな…!!!」
「銀時代のコスチュームだ………!画風違いすぎて鳥肌が……」
初回のヒーロー基礎学担当だなんて聞いてないですよ俊典さん!びっくりしすぎて心臓が止まるかと思った!そう言えば、彼はギリギリまで雄英高校で教鞭を取ることを黙っていたし――知ったのは合格通知が届いたときだ――極力そういうのは言わないつもりなのかもしれない。生徒たちに公平に接するために。それかただのサプライズ好きか……未だに暴れる心臓の上に手を当てて息を整える。
「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地をつくる為様々な訓練を行う課目だ!!単位数も最も多いぞ」
思わずゴクリと喉が鳴る。俊典さんと特訓した成果を、授業という形でクラスメイトと俊典さんの前で発表しなければいかんのか。下手なこと、できないじゃないか!頑張れおれの心臓!そんなおれの心境を他所に、オールマイトは待ってましたと言わんばかりに湧き上がる教室を見渡して、ニコニコと微笑んでいる。