第10章 無個性のザコはもういない
「“個性”を消した。つくづくあの入試は…合理性に欠くよ。お前のような奴も入学できてしまう」
「消した…!!あのゴーグル…そうか……!抹消ヒーローイレイザーヘッド!!!」
「イレイザー?俺…知らない」
「名前だけは見たことある!アングラ系ヒーローだよ!」
「さすがヒーローオタク」
見事ヒーロー名を言い当てた出久に、九十九は「グッジョブ」と言いながら親指を立てた。その指を勝己に掴まれて、そのまま反対方向に捻じ曲げられる。
「あだだだだ」
「視界に入んな。うぜぇ」
「理不尽すぎるだろ!おいこら聞いてんのかバ勝己!」
「ああ゛?やんのかコラ」
「やりません~残念でした~」
「上等だ。ぶっ殺す」
「2人とも、緑谷君が二回目を投げるぞ。相澤先生から指導を受けていたようだが」
眼鏡男子に言われて慌てて出久を見ると、ぶつぶつと何かを呟きながら完全に自分の世界に入ってしまっていた。大丈夫だろうか。
「除籍宣告だろ」
「まさか」
そうは言いつつも不安が拭えない。しかし、再びボールを手にした出久は、先程とは明らかに表情が違っていた。もしかして何か策があるのか?
「出久!大丈夫!お前ならやれる!」
先程よりも荒っぽいフォームで振りかぶった出久の手から、ボールが放たれる。その瞬間、風が起きた。