第9章 跳び回れ、ウサギ君!
説明しよう!フラグ乱立ゲームとは、誰かがフラグを立てるとそれに乗ってドラマっぽくする遊びだ。仲間内で一番上手いのは、もちろん才能マンこと勝己だった。彼の素晴らしい演技に感動して泣き出す者が続出する程だった。しかし彼は小学校に上がった辺りからノってくれなくなった上に目に見えて出久イジメが加速したため、この遊びは殆ど出久と九十九だけのモノになっていた。
綿菓子のような雲が流れる青空をぼんやり眺めていると、にゅっと現れた大きな影が青空を覆い尽くした。
「なあ、大丈夫か?」
「ぼちぼちさぁ」
「無理すんなよ。さっきの凄かったぜ、暴走するヌイグルミ。立てるか?」
差し出された手を掴むと、勢いよく引き起こされた。眩しい笑顔に赤い髪がよく映えるその少年は、「切島」と名乗った。胸元からひょっこり顔を出したバニーが、彼に飛びついて登り始めた。
「うおっ!?これさっきのやつ?」
「そうそう。これが元の大きさなんだよ。初対面の人にバニーが懐くって滅多にないんだけど、切島すごいな。お前、いいやつだろ」
切島はぱちぱちと数回瞬きすると、たじろいだように一歩下がった。ほんのりと顔が赤くなっているような気がする。
「ばっかお前……照れんだろ!」
「わはは。照れんな照れんな!……あ、そろそろおれの番みたい」
こちらに帰ってくる出久を見て、九十九は測定場所へ向かった。その後ろを切島がついていく。
「なあ、握力測定もヌイグルミですんのか?」
「いや、測定器にやってもらう」
攻略法は、もう考えてあるんだ。頭上に疑問符を浮かべた切島に向かって、九十九が不敵に笑ってみせた。