第3章 感動の、再会?
「嘘だろ~!」
「おっおっおぉおおおお」
「どうした出久。遂に壊れたか」
「女子と喋っちゃった」
「アレを会話の内に含むのか。前向きだな出久。そういうとこ好きだよ!」
興奮する出久について会場の扉を潜ると、既にどでかい講堂の半分以上の席が埋まっていた。出久と席が離れてしまったのが残念だ。振り返って探してみても、これだけいたらどれが出久なのか分からない。久々の再会直後の別れは正直言って寂しい。それにしても、出久も勝己も大きくなってたなぁ。育ち盛りってすごいや。この間まで二人共オールマイト人形を持って振り回していたのにな。
騒めく人々の個性的な顔を見渡して、ゴクリと息を飲む。ここに集まった人たち全員が、ヒーローを目指しているんだ。
「ねえねえ、それって君の個性?」
「えっ?」
それ、と指さされたのはデフォルメされたウサギのヌイグルミだった。愛称はバニーちゃん。いつも素早い動きで悪戯をして回るので手を焼いている。今も、配布されたプリントで紙飛行機を折って遊んでいる。まあ遠くへ行かないだけマシか。この人混みの中で見失ったら大変だ。
「そうそう。おれの個性は付喪神なんだ。モノに命を吹き込むことができるんだけどってコラッ。飛ばすな。それは大事なものだからダメだって」
紙飛行機を大きく振りかぶるウサギの首根っこを慌てて捕まえる。
「あはは!かわいい~!」
「コイツどうにも悪戯好きでさ。あ、おれは九十九。よろしく」
「よろしく!私は三奈。芦戸三奈だよ。個性は酸。なんでも溶かす!」
「なにそれ超かっこいい」
「でしょ」
ウサギを掴んでむいむいと揉みしだく芦戸の可愛らしいピンク色の横顔を眺めていると、漸く始まりを告げるチャイムが鳴った。