第5章 過去
お昼ご飯を食べ終わり、みんなが返した食器やなんやらを片付けて体育館へ向かった。
私は私なりに頑張ろう。
みんなが認めてくれた。
肯定してくれているから。
体育館のドアを開けると、ちょうど休憩中だった。
「あ、ちゃん、ごめん!今日も音駒についてもらってもいい?」
「あ、はい!了解です!」
音駒はまた人手が足りないらしく、また補助に入ることになった。
「あ、黒尾先輩手伝いに来ました!」
「お、ありがとな」
相変わらずでかいなぁ、と見上げてしまう。
「そうだ、昨日大丈夫だったか?急に倒れて」
「え、あ、はい。大丈夫です。」
あれ、なんで知ってる?
私がいた体育館にはいなかったはず……。
倒れたからかな?
主将同士で話してたとか?
「心配をおかけしてすみません……」
「いやぁ、急に目の前で倒れるからびっくりしたよ。大丈夫なら、無理しないように今日はお願いするね」
目の前で倒れた……?
昨日の記憶を思い出す。
倒れた時の声……
「あの、あの時声掛けてたのって……」
「あーうん、俺」
「す、すみません!ご迷惑をおかけして!!!!」
自分のことで色々あって倒れたのに、あの時駆け寄って、声をかけてくれたのは黒尾先輩だったんだ……
「いや、迷惑とかじゃないからね!後で烏野の主将から少し聞いたけど、ちゃんは頑張ってるから心配しなくて大丈夫だよ」
黒尾先輩は澤村先輩のように頭をくしゃくしゃとなでた。
黒尾先輩は他校なのに、昨日初めて会ったのに……
嘘ではない言い方。
見上げるとニカッと笑って、本当に嘘を言っていない顔もしている。
「あ、ありがとう…ございます……」
また目の奥が熱くなってくる。
視界がぼやけてくる。
「あ、クロ、烏野のマネ泣かしてる……」
「ご、誤解だ!研磨!!!」
「これはセコムに報告だな」
「夜久まで!!!!」
「ふふふっ」
音駒には烏野と違う温かさがある。
またその温かさに救われた。