第43章 煙 くゆりて 人 攫う
「遠いんですか?半日くらいやの?」
「は?越前に半日でつくと思うのか?
これだから、女は…」
瑠璃にのせられ、自分が大切な事を
うっかり 言ったことに気付かず、
男はブツブツと不服を言いながら、
瑠璃を担ぐと荷物の様に馬の背に放り上げた。
(越前…)
(越前…⁉︎)
足が縺れそうになるほど慌てて走る。
(早く、早くっ!)
自分が追われて死ぬ訳ではないのに、
死にもの狂いに走った。
明け方近くまで仕事をして、疲れて家路に向かっていたのに、
トンダものに出くわした。
眠気も疲れも何処へやら、全速力で家へと走った。
(知らせるんだっ)