第43章 煙 くゆりて 人 攫う
「ちょっと!あなた達っ。そこ、どいてよ!」
美弥が無駄に吠える。
小犬は吠えて怯えているのを隠したいのだ。
「あ"?何だお前、案外良い着物 着てんな。
お前が信長の女 か?」
美弥が吠えた為、男の関心が美弥に行く。
「いっやっ、手っ、離してよっっ!」
粗暴な侍風の男に手を掴まれ、
美弥が身を引いて拒絶する。
「お前が そうなのか って聞いてんだよ!」
男が怒鳴って、美弥の身体がビクッ と縮こまる。
(やだっ、怖いよ…信長様っ)
「やっ……の……」
美弥が恐怖のあまり不意に助けを求めて
信長の名を口にしかけた時、
「ワタクシの侍女に手を出さないで頂けますか」
男に掴まれている美弥の手を掴んで、
瑠璃が低くて静かな声で男を威嚇した。