第42章 (序章)流行り煙草
「ええ、こちらがその品物でございます」
「ご苦労、また頼む」
「いいえ、こちらこそ、コレのお陰で
副収入があり、大変助かっております。
どうせ捨てちまう物が、こんなにも良い値で引き取ってもらえるとは…本当にありがたい事です」
農夫はそう言って頭を下げ、代金を貰い
ホクホク顔で帰って行った。
「おい、コレを蔵へ運んでおいてくれ」
受け取った者も笑顔だ。
だが、その笑顔は農夫のように純粋ではなかった。
「なぁ、このただの枯葉はそんなに金になるモンなのか?」
使用人の運びながらの無駄口。
「お前知らないのか。
今 流行りの『阿呆煙草』の原料だよ」
昨今 上流階級や遊女の間で
『阿呆煙草』なる高級煙草が流行っていた。