第38章 戦勝し戴天に近づく
「秀吉様、私の事はご心配なさらずに。
それほど、か弱くない可愛げのない女ですので」
自虐。
瑠璃の助け舟は針の筵の敷かれた舟だった。
「いやっ、そのっ、そんなことはっ…ない……だろっ」
慌てて、しどろもどろに秀吉は否定。
(そりゃぁ……)
女らしからぬ女だと思ったりもしたけれど、
容貌は玉のように美しく、か弱そうで、
宴の時に見た姿は
(とても、可愛げのある乙女だった)
思い出して、何故か、急にソワソワしてしまう。
そんな秀吉を追い込むように、瑠璃の作り上げられた美しく華やか笑顔が向けられる。
「お気遣いありがとうございます。でも、
秀吉様も前を向かないと危のう御座いますよ」
小姓の姿をしていても、到底、男には見えぬ優美な笑顔。
「えっ、あっ、そ、そうだなっ///」
秀吉は紅葉のように赤くなって急いで前を向き直した。