第36章 戦雷落ち 戦命霧散
夜空に一つ、光が弧を描き流れたのを合図に、
「火箭※(かせん)、構え……撃て!」
舟上から次々と砦に火箭が射られる。
湖面をも明るくする程、無数の炎の矢が、
砦に向けて放たれる。
※火箭…火矢、先に火を点けて射る矢。
火の雨。
刀は役に立たない。
砦内に飛び込んだ矢から火が点き、
煙が立ち込め始める。
消化する暇は、無い。
逃げ惑う兵士は正門へ走る。
「うわぁぁぁぁー、逃げろぉ!」
「しっ、しかしっ」
「焼け死にしたいのか⁉︎」
水攻めならぬ火攻めに、正門が内から開いた。