第32章 女神敬仰
三成の横から家康が割って入る。
「気付かない方がおかしいんですよ。
あんな…こーんな、変装にもなってない変装、気付くでしょ。
まんま、瑠璃だったじゃないですか」
阿呆らしい と言った口調の家康が
冷ややかに秀吉と美弥を見てから、
チラッと瑠璃を見た。
いつもと変わらず、涼冷と澄ました様子で
会話を聞いている瑠璃。
暗い夜の月のように 冷めて美しく、
闇の中に灼照として立つ炎のよう。
(なのに……)
どこか 隠喑としているのはなぜ。
光の中の炎でなく闇の中なのはなぜ。
(光の中に立っていれば、もっと…もっと、
美しく惹かれるのに……)
瑠璃の横顔に憂う家康。