第30章 花顔涙咲
「大丈夫だ、さあ」
肩を抱いて、優しく宥めながら歩き出す、秀吉。
「おい、肩を抱くな」
笑いを堪えながら、政宗が釘を刺す。
が、
「こんなに震えてるんだぞっ」
秀吉 反論。
(あ〜ぁ…、まんまと騙されてやがる)
「不埒だ。風紀が乱れるんじゃなかったのかよ」
「煩いぞ 政宗」
すっかり瑠璃に騙され、手玉に取られている事なんて、思いもしない秀吉は、瑠璃の機嫌を取りながら歩く。
後から付いてくる政宗を、ちょっと 振り返って、瑠璃が童のように笑った。
(もう、目一杯楽しんでやがるな。
人の気持ちも知らないで)
小憎ったらしい。
恨めしい。
本当なら、肩に掛かっている秀吉の手に、
焼きゴテくらい押し付けたい気持ちの政宗だった。