第5章 朝の喧騒
着いた先は厩舎の前。
政宗は意外そうに瑠璃を見た。
「お前、馬に乗れるのか。
それとも、教えて貰うために俺を引っ張って来たのか」
「どっちだと思いますか?」
瑠璃はのんびりとした口調で
政宗に問うが、当てて欲しいと期待に
満ちた瞳で政宗を見つめる。
(おっとりした瑠璃が馬に乗れる?
しかも、時代は兎も角、公家に育った
姫様だろ……。
乗れるわけねぇ。
イヤ、待て、弓を引けるんだ。
もしかしたら乗れるのか……)
政宗は瑠璃を上から下までマジマジと
眺めながら、考える。
(いかにも、乗ります!って格好は見掛け倒しで……乗れない……?)
「あー、もう!わっかんねぇなぁ〜〜」
政宗が頭を捻る。
「間違えたら、罰ゲームしましょう」
「罰……げーむ?って何だそりゃ」
「あ、罰、バツ!
一つ言う事聞いて貰います、って事で」
瑠璃が慌てて言い直す。
「さぁ、お答えになって」
瑠璃の表情にヒントはない。
(何考えてるが全く読めねぇ。
分かり易いアイツとは大違いだな)
諦めて、口を開く
「乗れー…ない!んだろ?」
「聞いたら答えになりませんよ〜」
クスクスと口元を隠して笑う仕草は、
上品で、到底、自分で馬に乗るような
女には見えない。
「答えは見せてもらおうか」
いつの間に来ていたのか、光秀が側で笑っていた。
「光秀も呼んでいたのか」
ちょっと面白くない政宗。
「光秀様と馬に乗る約束をしていたんです」
この言葉に、更に面白くない政宗。
(なんで、いっつも、光秀が先なんだよっ)
「でも、政宗も一緒の方が楽しいかと思って、
誘うつもりだったんですよ?」
「出掛けに鉢合わせたからついでに声掛けたんだろっ」
「政宗〜、そんな事ないですよ。拗ねないで下さーい」
「拗ねてねーし!」
「なら、ヤキモチか?」
「それも違うっ」
ブツブツ言いながら、3人で厩舎の中に向かった。