第30章 花顔涙咲
ー参道の花ー
鷹狩の翌朝。
その日も春の陽気で気持ちの良い朝だった。
昨夜は悲しい事を考えずに眠った。
朝早く目が覚めた瑠璃は、悲しい事を考えた。
また涙が溢れた。
政宗が抱き締めてくれて、その胸で泣いた。
政宗が拭ってくれた。
晴れ晴れとはいかないけれど、
何とか落ち着けて、自分の部屋に戻った。
「出るぞ、用意は出来たか?」
政宗がいつもの様に、瑠璃の部屋の襖を開けて入ってくる。
「おっと、悪い。今日は瑠璃だったな」
ワザとらしい。
いつも、声をかけてから開けず、
声をかけながら開けてくる。
それも多分 ワザとなのだ。