第28章 鷹狩の蛇
男の太腿に脇差が突き刺さっている。
瑠璃が怒りに耐え切れず、力任せに突き立てたのだ。
「ゔゔぁぁ…あ"あ"ぁぁ……ぁぁ」
呻き声が喉の奥からせり上がって、止まらない。
光秀によって、男は正座の姿勢で脚をぐるぐると縛られ、手も後手に縛られているため、痛みに転げ回る事さえ出来ない。
「押し込むのが痛いか、ゆっくり引き抜くのが痛いか……どっちだと思う?」
痛みで死にそうな表情をして、
ブルブルと震えている男に、
これでもかも言うほど、優しく残忍な台詞を、
見事な美笑で問う。
(やっぱり、光秀さんだろ…末恐ろしい)
(美しい物には棘があるって言いますから…)
(棘?どこが棘だ。刃物だろ)
「私に負けて腹が立ったのか。ならば、
直接私を狙えばよかったのに、馬を狙うなど…。
美弥様に万が一の事があっていたら、
お前達の命など、もう、とっくに果てている」
瑠璃の言葉に、自分たちのした事がどれ程身の程知らずで危険だったか、初めて気付いたのだ。
「ひぃぃぃぃぃ〜〜…」
男がひとり、恐ろしいものでも見たかのように、
情けない声を発した。