第3章 初夏の訪問者
「瑠璃を見に来たわけではないんだろ。」
「ああ、斥候から、北に不穏な動きがあると
報告があったので、お前を揶揄いがてらやって来た訳だ」
最後の部分をさも楽しそうに言う光秀に、
(揶揄いに…って、安土からここまでどんだけかけて来てんだ…
わざわざ来たのか、本当についで なのか読めん…)
政宗はため息を吐いた。
「城下の旅籠屋に相馬の残党が入っていてると言うのは聞いた。
その他にも何処かが動いてるのか」
政宗の眼がギラリと光る。
「蘆名が上杉の肩を持っててな」
会津の蘆名氏は政宗の叔母にあたる
彦姫が嫁いだ家だった。
「内輪揉めで力が弱って、越後の龍を頼ろうとしてんな」
「すぐに動く感じではなさそうだが、
どうする?」
「もし、仕掛けてくるなら、討つに
決まってる」
ニヤリと笑う政宗。
叔母が居ようが政宗には動じる様子は
全くなく、楽しい遊びが始まるかのように、
蒼眼をギラギラさせて笑う。
「戦となると、身内も何もあったもんじゃないな。お前は」
光秀も面白そうに笑った。