第24章 家康の特訓
白石もまさか褒められると思っていなかったのだろう。戸惑った白石に
「はいっ、左」
手綱を引いて左に方向を変え斜行を続行させる瑠璃。
「上手、上手〜」
白石は褒められて気を良くしたのか
「はいっ、旋回」
斜行からその場回転する旋回の指示に従う。
「はい、駆歩っ」
次々と指示を出し、馬が考える時間を短くして、
術を行わせ従わせる。
「凄いね、白石!さすが家康様の馬だわ。
並足ー!速足ー!並足ー!」
白石はいつの間にか瑠璃の号令に従って走っていた。
「白石、私も上手でしょ?認めてくれる?」
何の飾り気も無く、無邪気で、童女のように楽しそうに笑いながら白石に話しかけている瑠璃。
結びが緩くなって、垂れた髪がサラサラとなびき跳ねる。
(瑠璃…いつも、そうしていれば、もっとーー…)
君は美しい。
夜の月のようでなく。
春の朝日のように柔らかく、明るく暖かい、そんな笑顔を見せている、今の瑠璃は、いつもより 数段、美しく可愛らしい…と家康は思った。
(家康…お前も、惹かれるのか?…)
瑠璃を見ている家康を、政宗は厳しい表情で見ていた。