第20章 禁止令発動
「はい、家康様。ありがとうございます。気をつけますね」
にこやかに答えて、立ち上がった家康を玄関まで送ってゆく。
「じゃ、もう当分、顔 見ないからね」
これまた素っ気なく帰りの挨拶をする家康。
「お世話になりました、家康様。また会いましょう」
眦を下げた甘い笑みを家康に向ける瑠璃。
「ーー…会わないっ」
家康は踵を返し、さっさと出て行った。
伊達御殿の門を出た家康は、耳まで赤くして口元を手で覆う。
(な……なんで、平然と、俺にあんな笑顔見せるんだ……)
「また会いましょう」はまるで「また会いたい」と誘っている様に思えた。
「うふふっ、家康様、好きだな〜」
家康の心を掻き乱しているとも思わない瑠璃は、上機嫌で独り呟いて向きを変えた。
ドンッ
「あひゃっ」
「誰を好きだって?」
声と共に抱きとめられたが、すぐに離される。
「もう良いのか?」
「無理しなければ良いって」
「善かったな」
「はい」
こうやって笑い合うのも久しぶりで、
ちょっと照れくさくて瑠璃は頬を染めた。
けれど、なんとなく 余所余所しいような政宗。
「部屋に戻ってろ、イイもんもってく」
(なんだろう)