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《イケメン戦国》未来から来たお姫様

第16章 新年拝賀4(女神の涙琴)




(光秀様…私はどうしたら……)

きっと、光秀様なら私の心を汲み取ってくれるだろう。
同調してくれるだろう。
そして、なだめるように諭してくれるだろう。
でも、それは根本的解決にはならない。
知ってる、コレは私の問題。


政宗が瑠璃の部屋を出る少し前の話を、
たまたま通りかかった光秀が耳にしていた。
(心の代わりに弦でも掻き毟るがよい)
琴と酒を送れば、察しの良い瑠璃なら気付くだろうと思い、女中に運ばせたのだった。

瑠璃は、手の甲で涙を拭うと、琴の前に座り、
爪を付けると ピィーンと弾いた。
緩調から激調へ、低音から高音へと、
速く遅く、心にまかせて弾く。
やり場の無い思いを叩きつけ叫ぶように。
悲しく激しい思いをのせ涙を流すように。

見せないようにしているし、見えない様にもしているが、瑠璃だってただの人。

心に巣食う憎悪、怨念
心に溜まった鬱憤、屈辱
心に憂う失意、哀愁

虚しいだけの心。
もがいても、もがいても、霧は晴れない。

(私が傷ついても、誰かが傷つくのは嫌だ…
なのに、私は政宗を傷つけた…)

残ったのは自己嫌悪と自責の念。

外へと流れる琴の音。
それは聴く人の今の心によって聴こえ方も変わる。
悲しく聴こえるのか、寂しく聴こえるのか、
安らいで聴こえるのか、皆、違うのだ。

瑠璃には流れて消えていって欲しい音。
空に吸い込まれ、水に流れて、無くなってしまえばいい思いを乗せて……奏でる…。

(謝らなくていい……。
お前が傷つく必要もない。
だから、気持ちを隠さず伝えてくれ…)

政宗には寂しく聴こえる音。

願うのはひとつ。
心を開き、自分らしく自由にいてくれる事。
それだけなのに、
今は届かない願い。



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