第16章 新年拝賀4(女神の涙琴)
「本当、お前の精神力は天より高いな」
政宗は感服脱帽だと言わんばかりだ。
「政宗、腕 解いてくれないんですか?」
「俺を心配させた罰だ」
政宗は意地悪を仕掛ける。
「戻ってみたら、部屋はもぬけの殻だ。
心配したに決まってんだろうが」
安土城の姫 美弥の様に無鉄砲に行動する筈のない瑠璃。
大人しく部屋で休んでいると思って戻ってみれば、
居るはずの瑠璃がいない。
飛び上がりそうに、驚き焦った。
慌てて探しに行こうとした政宗だったが、
はた と思い留まった。
「待っててやるか」
瑠璃には瑠璃の自由が必要だ。
(もし、泣いてたとしたら、心を落ち着ける時間も必要だ)
そう考えた政宗。
(瑠璃なら節度を持って戻ってくるはずだ)
何処にいても。
(俺の何処に戻って来る)
そう信じて。
直垂正装を脱ぎ、いつもの袴姿に着替えて待っていた。
少しすると、廊下に人の気配。
複数ではない。
(迷子にはならなかったんだな)
苦笑していると、そーっと襖が開き、
そろりと瑠璃が入って来て、無事捕獲した。