第15章 新年拝賀3 (謁見の刻)
信長の前に瑠璃が座す。
「貴様が政宗を救った女か」
「はい、瑠璃と申します。
拝顔に賜わり誠に有り難く、恐悦に存じ上げます」
手を付き頭を下げ、謝辞を丁寧に述べる。
サラサラとなだれ落ちる横髪。
白く細い、美しい指先。
淑やかで柔和、何処かたおやかで艶然とした雰囲気。
それでいて優雅で高潔、凛として強そうな横顔と眼差し。
端座だけでも感じられる瑠璃の麗質。
両脇から武将達が瑠璃を見ている。
見ていると言うよりは、身のこなし、
振る舞いを注視し、品定め、値踏みし、
選定する、そんな視線だ。
笑顔なのは信長とその横に座る美弥、
そして三成だけだった。
「面を上げろ、女」
信長の低く重い声がかかり、瑠璃はゆっくりと顔を上げる。
(…織田信長ー……)
緋色の双眸は鋭く強く貫き、瑠璃を威圧する。
けれど、瑠璃はその眼から目を逸らさない。
紅く切れそうに冷たい眼を、臆する事なく見つめる。