第11章 小田原停泊(R18)
『源蔵、
お前の腕は良いと聞いた。
数打ち物を作るのが嫌で腐ってるなら、
腐り切る前に俺の処に来い。
お前にやる気と忍耐力があるなら
刀工の道を習い俺の刀を鍛えろ。
生涯 イヤって言う程
刀だけを鍛えさせてやる。
その力を試し、やる気を見せるなら
この書を持って安土城の門を叩け。
輝くも輝かないも己の情熱と努力次第だ。
待ってるから、早く来いよ。』
「伊達様は人を見る目があるのか無いのか……」
薬屋の老主人は呆れ気味に溢す。
何故なら
「主人、頼み事がある。
この馬で源蔵の旅の準備をしてやって欲しい」
名乗りもせず、奥州から乗って来た馬2頭を
薬屋の主人に預けていたのだった。
「鉄砲玉の様なお人だったわい」
ふはははは、と笑った。
それから少しして源蔵は安土に向う決心をする。
この出会いが、政宗が専属刀鍛冶集団を抱える
きっかけになった事は、後に源蔵が、
名刀工と呼ばれるようになってからの話。