第63章 (終章)笑桜舞う春
着物の袖で一瞬にして消え去ったかのように見える。
流れるように白い指が伸ばされ、
貝を波のように攫ってゆく。
手と同時に唐紅を引いた唇が、
息を吐く為 開いて妖艶と婀娜を表す。
公家達も瑠璃の所作と艶姿に心を奪われて、手が止まる。
「瑠璃、勢いよく攻めよ」
信長が笑う。
公家達がその言葉を唇だけで笑う。
「信長様、ゆるりと攻めなくて、なんの楽しみがありましょう。
すぐに終わっては面白うありまへんやろ?」
瑠璃は向かって座る公家や姫達を見渡して、
麗凛と笑って同意を求める。