第10章 睦月の旅路(R18)
「それじゃぁ、留守を頼んだぞ」
政宗の言葉に恭しく頭を下げる家臣の面々。
「殿、本当に誰も付けずに行くおつもりか」
「時間がねぇ。参城の献納品は後からゆっくり持って来ればいい。一旦、俺は先に行く」
(1番の献納品は瑠璃だろうからな…)
表面は旅に出るのを楽しみにして笑っていた政宗の心が憂う。
「しかし、冬場の長旅となりますと……」
「瑠璃様の御身体も心配ですし、誰かー」
「途中、賊でもでたら……」
家臣達は口々に政宗を諌(いさ)め止める言葉を述べ続けている。
小十郎は政宗にはもう何も言わなかったが、
小声で瑠璃に耳打ちする。
「瑠璃殿は止めてくれぬのか」
「小十郎様、私で止められるなら、小十郎様でも止められてます。諦めましょう…」
瑠璃も小十郎に小声で返す。
「しかし、殿は慣れた旅ですが…どうだ、
瑠璃殿は後から籠でー…」
まだ、粘る。
「小十郎…全部聞こえてるぞ」
眉をひそめて後ろを振り返る。
「では‼︎」
「馬鹿を言うな。
寂しく独りで旅が出来るか!」
言い訳が童子。
「でしたら、私がお供いたします!」
意気揚々と小十郎が同行を申出る。
「いらん!
お前は1番付いてくるな」
押し問答は続く。
「お前が居ると俺の自由がなくなる!」
プイッと顔を背ける。
やっぱり童子。