第48章 或る日の安土城下(息抜き劇場)
「謙信様は、『氷清玉潤』『深遠篤実』と言う言葉がピッタリですわ。羨ましい」
瑠璃の銀鼠色の瞳に、強く射抜かれて、
擽ったいほど賞賛された。
(迷いも淀みもない鈴琴のような声で
自信を持って言い切れる女はそういない)
「強いのだな」
「謙信様は案外、弱いんですね」
クスッ と笑う。
「貴様っ💢」
逃げるようにサッ と立ち上がった瑠璃が、
身を翻して笑いかける。
「弱くはないですが、送って下さいますよね」
黒い絹糸のような髪がサラサラと流れて揺れた。
それに誘われるかのように、謙信が立ち上がる。
「仕方あるまい、一応、女だ」
フッっと笑って瑠璃の側へと歩んだ。
※氷清玉潤…人格が優れ、氷のように清く、玉のように潤いがある。
※深遠篤実…心の持ち方が深くて誠がある。